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散策ノススメ
「散策のススメ」
松山地区まちづくりセンター
散策ノススメ その5
つきあたりの美学〜アイストップの話
 歴史的街並みには。必ず「アイストップ」と呼ばれる場所があります。これは、空間を見通すときに視線が集中する位置につくられるものを指します。例えば、街路の突き当たりや折れ曲がり地点に見られる樹木・鳥居・建物が「アイストップ」となります。
 大宇陀の歴史的街並みにも何か所かアイストップが存在します。その中でも特に興味深い事例として、恵毘須神社を紹介します。
 本町通りから神社を眺めたときの景色は、アイストップの典型的な事例です(写真1)。境内に入り鳥居をくぐると正面に覆い屋(建物を保護するためにその外側を覆う建物)があり、その中にはえびすさん(南側)、愛宕さん(北側)の社殿がが並んで建てられています。
 この覆い屋がじつに興味深いのです。なぜなら覆い屋は普通、棟木を社殿が並ぶ方向と同じ向きにして切妻屋根を架けるのが最も合理的な方法なのですが、恵毘須神社の場合は、本町通りの延長線上に屋根の妻が設けられているためです。社殿を保護することを一番の目的として、使い方や本町通りからの景色に対して配慮した結果、このようなかたちになったのではないかと考えられます。
 本町通りを西に向かって歩くと、道を曲がるまでずっと恵毘須神社が視界に入ります。この覆い屋を作った人々は「本町通り」からの景色が美しく見えるかどうか」にずいぶん気を配っていたように思えます。
 2月28日の初えびす。この運営にあたる下本町では年の初めから本格的な準備に取り掛かっており、これから更に忙しくなる時期です。当日は恵毘須神社の覆い屋が解放され、吉兆のついた笹が並べられます。周囲の道には幟が立ち、様々な出店も並びますので、いつもと違う景色をたのしみに、或いは今年の福をもらいに、出かけてみてははいかがでしょうか。
 洋の東西を問わず、どこの歴史的町並みでもアイストップはあり、アイストップの工夫はその町の美意識につながっています。つきあたりの美学を読み取りながら歩けば、町並みのいろんな表情が見えてきます。
 次回はアイストップに関連して、屋根の妻にまつわるお話をしましょう。
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写真1 恵毘須神社

【取材協力】下本町
【参考文献】『建築大辞典』彰国社/1993年6月
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 散策ノススメ[その4]
距離感から読み取る町並みの魅力