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散策ノススメ
「散策のススメ」
松山地区まちづくりセンター
散策ノススメ その20
建築深読み講座(2)
転職する木材
 緑がさわやかに映える季節、柱に背丈を刻まなくなったのはいつだろう、と思いつつ端午の節句を迎えようとしています。
 前回は木造の建物は大胆な改造が可能だとお伝えしましたが、今回は改造によって最初にあった場所から動かし、違う用途で使われる「転職する木材」について見ていきましょう。手がかりは、柱の傷ならぬ木材の加工痕(痕跡)です。
 2枚の写真はいずれも、まちづくりセンター千軒舎(旧内藤家住宅)の改修工事のときに撮影したものです。
 写真1は、改修前まで2階の柱として使われていたもので、正面から見ると普通の柱ですが裏側には長方形の穴がたくさん刻まれていました。これはある時代に、建物の正面にあった台格子の上側の框として使われていたと考えられます。なお、千軒舎改修工事の際、この柱に刻まれた間隔で台格子を復原し、1階部分に再現しています。
 もう一枚は、和室の床板をめくった後の写真です(写真2)。床板を支える大引き(根太の当たる面のみ平らな木材)が並ぶ中、一本だけ4面ともきれいに製材された木が使われています。本来、床下に隠れる木材は必要最低限の加工で済ますのですが、ここだけ製材された木材が使われた理由を考えます。よく見ると敷居を入れた痕跡が確認でき、以前は柱として使われていたと推測できます。どの位置で使われていたかは解明できませんでしたが、周囲の木材の色とも若干違い、この位置では明らかに異質なものです。
 この木材はある時代に建物のどこかで使われたと考えられ、間取りが変わるほどの大改修をした際に抜かれた柱が、「まだ使えるだけの強度がある」「この部屋の大引きに丁度いい長さ」等の理由で「大引き」に再加工して利用された可能性があります。
 木造建築では、木材の再利用はごく普通に行われます。壁板を床板に転用する例や、柱の位置を変える例。同じ建物の中で木材を使い回したり、別の建物から使わなくなった材料を持ってきたり、全部解体して別の場所で組み立て直したり、新しい材木を足して違う形の建物にできる点は、加工・運搬しやすい木造建築の長所ではないでしょうか。
 まちづくりセンターの改修工事では、こうした昔の大工さんの「使えるものはなるべく使う」姿勢を垣間見ることができました。伝統的な建物のほとんどは、木材の転用があると考えられます。次回は、木材に刻まれた痕跡を整理し、一軒の家の履歴を読み取ります。
写真1 2階柱跡の痕跡【台格子の上框…?(写真1-2はイメージ)】
写真2 角柱の再利用例
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