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散策ノススメ その8
上を向いて歩こう 〜屋根瓦の話(上)〜
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こいのぼりが甍の波を泳ぐ季節となりました。「甍」はおもに『瓦葺の屋根面』や、『屋根の棟を葺くのに使われる瓦の総称』をさした言葉です。
屋根は建物の上部を覆い、壁とともに建物を保護する役目を持っています。屋根葺材には防水性・防火性・強度・耐久性・通気性・断熱性・遮音性・重量・経済性・施工性・市場性・美観と、様々な性能が求められます。種類が豊富な屋根葺材の中でも、粘土を焼いてつくる瓦はこれらの諸性能をよく備えた屋根葺材といえるでしょう。
町家の屋根瓦には、「本瓦葺」と「桟瓦葺」があります。大宇陀の歴史的町並みでは、ほとんどが桟瓦葺の町家です。桟瓦は延寶2年(1674)に発明されたと言われています。重量が本瓦葺の約半分で地震時に有利な点、防火性能の高さ、施工性のよさが認められ、江戸時代中頃から都市部を中心として日本全国に普及しました。
おなじ桟瓦でも、軒瓦には様々な形があります。小巴の形が饅頭に似ているところからつけられた「万十軒瓦」は、合端(隣の瓦とのつきあわせ部分)が万十巴の裏に隠れて合わせの必要がないので、頻繁に使われます。昭和初期以降の町家でよく見かける形です。
「鎌軒瓦」は小巴がなく、模様の無いものと、唐草文などの模様がつくものとがあります。合端合わせの必要があるので高度な技術が要求されます。数奇屋・門・塀など、屋根を軽く見せたい場合に使われ、江戸末期から明治にかけて建てられた家で見かけます。
「一文字軒瓦」は、使用箇所・使用目的は鎌軒瓦と同じですが、合端合わせと、垂れの下端を一直線にしなければならないので、さらに高度な技術が必要です。
これらの形の他にも、小巴が縦長の楕円になっていたり、模様が入っているものなど、いろいろあります。葺替により、当初の瓦ではない家もありますが、軒瓦の形から町家の年代をある程度推測することが可能です。同じ建物でも、1階と2階で異なる形を使っていたり、同じ庇でも違う形を使っています。足元や通過交通に気をつけながら、注意深く観察してみましょう。
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万十軒瓦
鎌軒瓦
一文字瓦
【参考文献】『日本の瓦屋根』坪井利弘著 1984年11月理工学社 出版
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