宇陀松山観光案内ホームページ hdr_en.gif
散策ノススメ
「散策のススメ」
松山地区まちづくりセンター
散策ノススメ その9
上を向いて歩こう
〜屋根瓦の話(下)〜
 梅雨の時期は外出が億劫になりがちですが、雨粒がはねる音を聴きながら、いつもと違った風景を楽しみたいものです。
 前回は軒先を観察しましたが、今回は視線をさらに上に向け、屋根のてっぺんに載っている棟瓦に目を向けましょう。
 棟瓦の中で、棟の上下の熨斗瓦の間に組み込まれた瓦を棟込み瓦と言い、輪違い瓦・菊丸瓦・青海波・松皮菱など、様々な形があります(挿図1)。大宇陀の町家では青海波が多いようです(写真1)。
 また、棟の端を飾る鬼瓦の形も多様で、(1)招福神型(安泰を祈るもの)(2)獅子口型(元は神社や宮中に関係する建物に使用されたもの)(3)鬼面型(鬼の面をかたどって祈願・守護を願うもの)(4)誇示型(家紋等を入れたもの)の4種類に大別されています。鬼瓦は棟の両端をとじる瓦に意味を与え、建築物の姿形を最終的にしまりのあるものにするという日本独特の発想から展開したと考えられます。鬼の面や桃は魔除け、水の文字は火除け、福の神には招福の願いが込められ、家紋や屋号には権力や勢力を示すはたらきがあります。
 基本的に受注生産品である鬼瓦は、側面や裏側に製造年月日や瓦師の名前(刻銘)が刻まれていることがあるため、建物の創建年代や履歴を判断する際に重要な手掛かりになります。桟瓦でも、ごく稀に裏面に文字が刻まれていますので、屋根の葺き替え等で瓦を降ろしたときに探してみるといいでしょう。
 屋根面を眺めていると、しばしば古い瓦を一方に寄せて葺き直している家を見かけます(写真2)。この古瓦は職人さんが瓦を叩いて音を聞き、使えると判断され再利用した瓦です。前回お話しした「同じ庇でも軒先の種類が異なる例」は、このように最後まで瓦を使い切ることにも原因があるようです。モノから情報を読み取る術を身につければ散策がより面白くなりますが、同様に、モノを大切に使い続ける姿勢もしっかり受け継ぎたいですね。
 次回は、建物の『袖』についてです。
susu_09img01.jpg
挿図1 出典=『建築大辞典 第2版』彰国社編1993年6月
susu_09img02.jpg
写真1 青海波の棟込みと鬼瓦
susu_09img03.jpg
写真2 右の約半分が古瓦の屋根

参考文献=『獅子口を探る』小林章男著1995年12月 自費出版/『京町家再生の技と知恵』京町家作家組編・著2002年5月 学芸出版
susu_boder.gif