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散策ノススメ
「散策のススメ」
松山地区まちづくりセンター
散策ノススメ その10
さりげなく自己主張を
個性の見せ場〜袖壁〜
大宇陀にある町家の多くは。2回の庇の両脇に袖壁が付いています。持ち送り(写真1)や着物の袖のような形のもの(写真2)など、建物によってそれぞれ異なります。今回はこの「袖壁」についてです。
うだつは地域により様々な形がありますが、大きくは「本うだつ」と「袖うだつ」の2種類に分かれます。
「本うだつ」は妻壁を屋根より高く突き出して小屋根をつけたもので、岐阜県美濃市美濃町(写真3)や長野県東御市海野宿のうだつがこれにあたります。
一方、「袖うだつ」は、町家の二階部分の軒下両側に設けられた袖壁を指します。本うだつの名残といわれ、文字や絵を描いて看板として用いられることもあり、奈良県や大阪府南東部でよく見られます。強いて言えば、徳島県脇町のうだつもこちらの部類に入ります。本うだつがいつ頃出現したものか分かりませんが、『洛中洛外図屏風絵(16世紀)』に描かれていることから、室町時代の町家には既にあったようです。当時は防火が目的ではなく草葺き・板葺きの屋根の風よけだったと考えられています。屋根が瓦葺きになってから、軒を支える、隣家の窓からの延焼を防ぐという具合に、構造上・防災上の必要に応じて変化し、後に看板としても活躍するようになったと推察されます。確かに、歩行中は正面よりも側面の方が目にとまりやすいので、意識しながら歩いてみて下さい。
袖壁は江戸時代後期の建物に既に見られます。近代に入ると、家紋を入れたり漆喰で模様を入れたり、中には凝った形のもの(写真4)もあり、それぞれが自己主張をしているので見ていて飽きません。多くの家についているのに、細かく見るとそれぞれ違う。その違いを探すことが、散策を楽しくするひとつの要素です。片方が袖壁でもう片方は持ち送りの家、片方にしか袖壁がない家もみかけます。なぜ、片方なのか。建物が無くなった以外にも理由があるようですが、まだよく分かっていません。
袖壁については、「猫這い止め」(近江八幡)、「雁木ど」(北陸)等、呼び方にも地域性があります。大宇陀の袖壁は「袖うだつ」と呼ばれることが多いようですが、もし、他にも呼び方をご存知の方がおられましたら、松山地区まちづくりセンターまで御連絡下さい。
全国共通で認識できる言葉はもちろん必要ですが、地域に根ざした呼び方は、その地域の人が守らなければ途絶えてしまいます。言葉も含めた地域の個性を大切にしたいと思います。
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(写真3)
本うだつ
(美濃市美濃町)

(写真4)
凝った形の袖壁
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参考文献=『建築大辞典 第2版』彰国社編・1993年6月彰国社
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