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散策ノススメ その4
距離感から読み取る町並みの魅力
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歴史的町並みには、ここで暮らした人の生きた証や住まいに対する考え方が伝えられており、その上に現在暮らしている人の生き方が重なっていきます。暮らし=人間の営みに様々な視点があるように、暮らしを反映している町並みにも多くの視点があります。
今回はそのうちの一つ、距離感に応じた町並みの読み方についてです。なお、距離感に定量的な区分はされていませんので、本文では図1のように捉えて進めます。
(1)目の前の風景(近景)
連続する昔ながらの家は全体として統一感がありながら(写真1)、窓や建具は個々に違うため細かい所に目を向け、共通点と個々の違いを探る楽しみがあります。特定の範囲でみられる共通点がその町並みの特徴であり、個々の違いが多いほど、町並みの魅力に深みが増すと考えられています。
(2)少し先を含んだ風景(中景)
家の背景に迫る緑(城山)、宇陀川から眺める水際の風景など、周辺の自然環境とのバランスをみます。大宇陀のように家が密集し、なおかつ自然が側にあるという環境は都市部ではなかなか味わえないのではないでしょうか。
(3)遠くに見える景色(遠景)
家の合間、路地の向こうに見えかくれする山には、意味があり理由があります。
※詳しくは、第1回(広報おおうだ平成15年10月号)をご参照ください。
距離感まで意識していたかは定かではありませんが、昔の人は景色を考えながら家や町をつくってきました。これが慣れ親しんだ景色として、今、私たちの目の前にあるわけです。
あなたの好きな景色を思い浮かべてください。その景色の心地良さを自分なりに解釈することが町並みを読む醍醐味につながります。一度、実践してみてはいかがでしょうか。
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写真1 軒や棟高、屋根勾配が揃い、統一感がある
図1 距離感による景色のとらえ方
【参考文献】『都市の空間史』伊藤毅/2003年12月、『建築大辞典』彰国社/1993年6月
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