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散策ノススメ
「散策のススメ」
松山地区まちづくりセンター
散策ノススメ その21
建築深読み講座(3)
家の履歴を追う「千軒舎の場合」
 葉の色が次第に深くなり、蛙の声が聞こえ始めました。まもなく梅雨に入ります。洗濯ものの乾かないうっとうしい季節ですが、雨に濡れた情景もまた趣深いものです。
 さて、建物の各所に残る木材の痕跡(広報おおうだ4月号)や転用材(同5月号)の存在から、何度か形を変えていることがわかりましたが、これらを整理していくとその家が辿った歴史が見えてきます。まちづくりセンター千軒舎(旧内藤歯科医院)の場合は少なくとも4回、大きな改変があります。
 この建物は明治前期に建てられたと考えられています。出入り口に家が建てられた当初の柱が残り、そこにはスリアゲ戸の痕跡が確認できます(写真1)。明治後期〜大正末頃に建具をスリアゲ戸から格子に変え、庇の一部が短くなりました。これが最初の改変です。
 次に、昭和前半にザシキの改築が行われたとみられ、柱の色や大きさ、床下や小屋裏の材料が違います。これが2度目の改変です。
 昭和の後半に、歯科医院をしていた部分の改装が行われます。道路に面した格子が待合室の腰付窓(写真3)になり、建物の南側の間取りが大きく変わります。これが3度目の改変になります。4度目の改変、千軒舎の改修工事(写真4)までには、台所の増築、化粧部屋の撤去、土間のコンクリート化、2階の改造等、時期が確実に把握できない改変も多々見受けられます。
 建物は使われる時間が長いほど、その時々の生活にあわせて変化していきます。その変化も、木材が建物のどこかに残っていれば、以前の様子を読み取ることが可能なのです。千軒舎では工事の前に痕跡や転用材の確認作業を行い、改変の履歴を整理しました。その結果、表構えだけでも3段階の改変がありましたが、今後の用途を考慮した結果、第2段階の姿に近づけるという方針で改修工事を行いました。今回の改修工事でも建物の履歴がわかる改修を心がけ、この建物の情報(=履歴)を刻んだ材料を極力残しています。
 千軒舎の変遷の詳細は、まちづくりセンター内に提示してありますので、お気軽にお尋ねください。
 次回は建物の中身、用途を変えて使い続ける建物をご紹介します。
写真1 スリアゲ戸の溝
写真2 数々の改変の跡
写真3 改修前の写真(宇陀まちなみ研究会撮影)
写真3 改修後の写真
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 散策ノススメ[その20]
建築深読み講座(2)
転職する木材
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