太陽が一層存在感を増す季節となりました。日差しは厳しくても、前川のせせらぎが不思議と涼感を与えてくれます。これまでの連載では、「静止画」的な町並みの捉え方をしてきましたが、今回は「動画」として景色の変化を楽しんでみたいと思います。
出発点は黒門(西口関門)の手前にある大橋です。まずは宇陀川を渡り、松山地区に入ります。地区の案内看板の前に立って振り返ると、西山岳が正面に大きく見えます(写真1)。そこから黒門をくぐって3度目の曲がり角で、今度は城山が見えます(写真2)。城山を目ざして進み、振り返るとえべっさんの鳥居と覆屋が目に入ります。春日神社の参道に至る東西通りは道の両側に伝統的な町家が連なり、様々な時代の建物が目を楽しませてくれます。
続いて上本町から上町にかけて歩きます。ほぼ直線の広い道に沿って間口の大きな家が連続し、整然とした印象を受けます。東西通りとの交差点は、水の分かれまで西山の頂が見える箇所が続きます。
中新町から万六町にかけての南北通りでは大小の間口の町家が混在し、ゆるやかなカーブのある場所では家の妻が連続して見え(写真3)「この先になにがあるのかな」という期待感を持たせます。道の途中には神楽岡神社や佐多神社への参道が山に向かって伸び、鳥居が視線を受け止めます。神楽岡神社は高台にあり、ここから地区を見下ろしたり、遠方を眺めることができます。
一方、小出口から下茶にかけての南北通りは、水の分かれを越えてしばらく行くと、まっすぐ伸びた道の両側に水路が走り、通りの中ほどに寺院があります。大きな間口の家は数える程度ですが、町家が続く様子は上町周辺とは異なった魅力を醸しています。
間口の大きな家と小さな家、路地の向こうに見え隠れする山の頂、神社の鳥居、カーブする道、等等…。どこまでが計算されたものでどこから偶然の産物か、現在は推測するのみですが、大宇陀に残る歴史的な町並みは「歩く人」がほとんどだった時代に整備されています。町並みを歩くことで、その町が持つ『連続する景観の変化』を楽しんでみましょう。
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