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散策ノススメ 最終回
町並みは地域のDNA 〜「生きた証」を 「かたち」に託して〜
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年越しの準備が始まると、にわかに町が活気づきます。格子洗いにいそしむ人を横目に、大売り出しののぼりがはためく町並みを歩いていると「節季払いで松山へ行くのが楽しみだった」と近所の方から聞いた思い出話がふと脳裏に浮かびます。
これまで町広報の連載を通じて、町並みの「かたち」を切り口に様々な魅力を紹介しました。城山と川の間に展開した立地、山が景色に与える影響、ある時期の流行を大宇陀なりに解釈した形、手の込んだ細部意匠等、じつに盛りだくさんの要素があり、全てを紹介しきれず、また見えていないものも多々あります。
町並みをかたちづくる単位のひとつが「家」ですが、家づくりについても情報が充実し選択肢が増え、昔に比べると便利で簡単になりました。けれどもその分「その土地らしさ」が希薄になり、全国どこへいっても同じ風景が広がることに強い危機感を持っています。
そこでこの度、大宇陀町の都市計画で、松山伝統的建造物群保存地区を指定しました。地区の中で家の外観を変える際に許可が必要になりますが、これは「かたち」の上で「その土地らしさ」を失わないため、あるいは回復するために欠かせない措置である点、どうか皆さんのご理解とご協力をいただきたいと思います。
これまで紹介した要素の中で共通するのは、周囲との調和を意識したモノ作りへの姿勢です。私たちは、現在の町並みに残っているモノから様々な工夫や知恵を受け入れ、「その土地らしさ」を読み取るわけですが、モノが残るということは、これを作り・使い・残し・伝えた人が存在しますので、モノが古ければ古いほど、関わる人の数も増えていきます。これらのモノにまつわる出来事・暮らし方・思い出=「人が生きた証」を読み取る力が重要になると考えます。(写真1・写真2 野依小学校6年生の地域学習の様子)
この町で生きた人々の存在を示す物品や建物の集合体が歴史的町並みであり、ここであった出来事を知り、伝える作業から様々な価値が生まれます。「今残るかたち」にまつわる事柄を集約し、現代の暮らしも考慮しながら、今後のまちづくりに役立てたいと思います。
町村合併でわがまちの範囲が広がります。広がるからこそ、自分たちが住む場所の特色について「誰かが、または自分が生きた証」を見つめ直し、愛着と誇りを育て、深めていただきたいと強く願っています。
平成15年10月号より、町民の皆さんに「大宇陀の魅力」を伝えるため、この「散策のススメ」の連載を始めました。
27回の連載の間に、取材に協力していただいた方々、応援してくださった方々に感謝を申し上げます。
町並みの中には、まだたくさんの知恵と工夫があります。この連載を機会に、皆さんがご自身で「おおうだ」の新しい魅力を発見できたなら幸いです。
【松山地区まちづくりセンター】
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写真1 「戸袋の看板」から過去を知る
写真2 この狛犬は?…実は宇太水分神社の狛犬と作者が同じ。「かたち」からは様々な情報が読み取れます。
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