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散策ノススメ
「散策のススメ」
松山地区まちづくりセンター
散策ノススメ その13
格子のある風景(2)
〜格子の用途とカタチ〜
 日を追うごとに涼しくなり、秋の深まりを感じます。前回に引き続き、格子についてです。
格子は桟の太さや並び方の違いにより、多種多様なものが存在します。中川武著の『日本の家〜空間・記憶・言葉』や彰国社編の『建築大辞典』によると、京都では業種に分かれて格子の種類が分かれているそうです。
 例えば、太くて荒い台格子(写真1)は、米屋格子(糠埃がつくのを嫌ったため塗装無し)・酒屋格子(ベンガラ等の塗装あり)と呼ばれており、味噌・醤油・油・麩屋などに用いられていたようです。柱より外側に突き出してつくられた出格子(図1)は遠見格子、御茶屋格子、旅籠格子の呼び名があり、柱間内につくられた平格子(図1)は仕舞屋格子、糸屋格子の別名がありました。
その他、短い竪子を間にいれた親子格子(子持ち格子ともいい、短い竪子の数により、二本子持ち、三本子持ちと呼びます)、細目の竪子をわずかな空きに配列した細目格子、格子と空きの幅が同じ配列の木返格子、連子格子、幅の狭い板状(目板状)の竪子を桟に鋲で打ちとめた目板格子等、さまざまな要素を用途にあわせて使い分けていました。
 京都に限らず、日本全国に格子を持つ町並みがあります。倉敷格子、近江格子、大坂格子等、その土地の名称がつけられるように、風土・工匠・地域での申し合わせ・施主の好み等、いくつかの要因がはたらいてその地域独特の発展をしていきます。
 大宇陀の場合、業種による使い分けがあったかどうか定かではありませんが、部屋によって使っている格子の種類が違う点が面白いところだと思います。部屋が奥にいくほど、竪子が繊細で、空きが狭くなっているような印象を受けます。
 また、台格子については横桟の位置が違うものがあり、均等割りのものと中央に寄せたものとがあります(写真1)。竪子が徐々に細くなったり、空きが狭くなったり、同じ種類の格子でも、じっくり眺めて他のものと比べてみると、どこかに相違点があるわけです。それが時代による違いであるのか、それ以外の要因かを考える作業をしていくと、大宇陀の独自性の一端がつかめるような気がします。
次回は、格子の変遷についてです。
写真1 台格子。均等割り(左)と中央に寄せたもの(右)
図1 多種多様な格子の種類

参考文献=『日本の家 空間・記憶・言葉』中川武著 TOTO出版2002年6月、『さがしてみよう日本のかたち』立松和平 文・日貞男 写真 山と渓谷社 2003年2月、『建築用語図解辞典』橋場信雄 理工学社1970年2月
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