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散策ノススメ その15
格子のある風景(4) 〜垣根としての役割、 駒寄せと犬矢来〜
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日が徐々に短くなり冬の訪れを実感します。寒さも厳しくなりますが、健康に気を遣いつつ冬の景色を楽しみたいものです。
さて、建具の格子の話が続きましたが、今回は別の役割を持つ格子を紹介します。
町家の前面に、「駒寄せ」と呼ばれる空きの粗い垣根があります。馬を繋ぎとめるものと言われていますが、実際には家の壁面を傷つけられるのを防ぐためにあり、私有地を示す境界でもあります。高さは1m前後のものが一般的で、京都では「結界格子」とも呼ばれています。駒寄せは江戸時代末頃から多くの都市でみられ、現代でも歴史的町並みの各所に残っています。大宇陀では、一般的な高さのものもありますが、比較的丈の高い駒寄せが多いようです(写真1)。全面開放の店構えと比べると、やや閉鎖的な印象を受けます。
また、駒寄せには六角形や八角形のたて子に『なぐり』(「ちょうな」や「つきのみ」という工具で木材の表面を加工したもの)を入れたものもあり、手の込んだ仕事を見ることができます(写真2)。
この駒寄せと似たような役割を持つものに、犬矢来があります。犬矢来は、塀や建物の足元を保護するために竹や木を曲げて造った囲いのことを言います。関西の町家によく見られるもので、「駒寄せ」「駒防ぎ」と呼ぶこともあるようです。他者の立ち入りを防ぎ、建物を保護する点が「(結界格子の)駒寄せ」との共通点です。
駒寄せの丈、意匠、犬矢来との組み合わせは家によって異なり、背後にある格子や簾と相まって、多種多様な軒下空間をつくっています。視線を遮る格子の手前に、他者の立ち入りを遮る空間があり、必要に応じて簾を吊る、という具合に通風を確保しながらも、有形・無形のスクリーンを重ねてプライバシーを守る先人の工夫が読み取れます。完全な遮断・開放ではなく、ゆるやかに「うち」と「そと」をつなぐ格子は、様々な形で私たちの目を楽しませてくれます。格子だけにとどまらず、町家は現在に至るまでの人の営みや記憶を伝える媒体の役割を持っているため、これらから情報を読み取りながら、現代的な生活を考える力を磨きたいものです。
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写真1 駒寄せ。場所により高さが異なる
写真2 なぐり仕上げの竪子
参考文献=『京町家づくり千年の知恵』山本茂 著/2003年12月/祥伝社、『日本の家 空間・記憶・言葉』/中川武 著/TOTO出版/2002年6月、『建築大辞典』彰国社/1993年6月、『建築用語図解辞典』/橋場信雄/理工学社/1970年2月
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