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散策ノススメ その16
庇の下の力持ち 〜「持ち送り」と「方杖」の話〜
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新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、年末年始は何かと忙しい時期ではありますが、飾られた家々を眺めながらのまち歩きを楽しみたいものです。
お正月の間、家の外観でいちばん目にとまりやすいのは注連縄飾りかと思いますが、その際には玄関まわりや庇の下にある「持ち送り」や「方杖」にも目を向けてみてはいかがでしょうか。
「持ち送り」(図1左)とは、壁や柱より外側に出た桁(出桁)を支える腕木や小庇の下にある板状の部材です。渦巻きや若葉の模様がついたもの(写真1)が一般的ですが、大宇陀の玄関まわりの持ち送りは彫刻がないものが非常に多く、シンプルな印象を与えています。シンプルではありますが、材料は大きくて立派なものを使っているのが特徴です。持ち送りは近代になると金属製の製品が登場し、種類の幅が広がります。また、二階の持ち送りは漆喰で塗られたものが多く、おもに建物の角や窓の庇に使われています(写真2)。
「方杖」(図1右)は腕木と柱をつなぐ斜めの棒状の部材をいいます。洋小屋(トラス)の斜めの材を指すこともあります。直線的な方杖だけではなく、微妙にカーブを描いた方杖もあります。方杖は広い意味で持ち送りの仲間になり、材料のかたちによって「棒状=方杖」「板状=持ち送り」というふうに区別しています。
持ち送りと方杖は、いずれも水平に組まれた材料と垂直に立てられた材料を斜めに結んで固めるための部材です。せり出した部分の補強材としての役割もありますが、様々な形をしているので視覚的に楽しむこともできるのです。
大宇陀の歴史的町並みの中には持ち送りも方杖もそれほど数はありません。玄関まわりに持ち送りをつけず、腕木を上から金属の棒で吊っている事例もありますので、注意深く観察してみてください。
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図1 左「持ち送り」・右「方杖」
写真1 渦巻きと若葉
写真2 こういう場所に
参考文献=『建築大辞典』彰国社/1993年6月、『建築用語図解辞典』/橋場信雄/理工学社/1970年2月
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